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2021年10月21日木曜日

原子力の未来

 

1. 原子力発電の安全

 日本が戦争に敗れ、軍隊が武装解除されたとき、そして長崎、広島に落とされた原爆の威力を目のあたりにし、将来再軍備がなされた時、この原爆製造能力を何とかして保存するべきだと考えた一握りの人達がいた。

 安全で、安価であるである原子力発電はエネルギーの自給率が極めて低い日本にとって絶対必要不可欠であるという「鶏と卵の論法」で、安全で安価である原子力発電は日本にとって絶体必要であると結論付けられた。

 私は大学での原子力発電工学に於いて「原子炉では暴走しそうになると自動的に沈静化に向かい爆発することはない(固有安全性)」と習った。つまり事故が起こりそうになると自分自身でその事故を抑えることが出来るという事だ。しかしこの事は福島の事故で完全に嘘であることが判明した。

 原子炉は15cmから30cmの厚さの特殊鋼で出来ているから安全だと聞いた、この時原子炉から出ている配管の厚さははどうなっているのだろうと思った。福島原発事故を起こし水素爆発を起こしたとき、メルトダウンの発表が無いのは奇異に思った。何故なら水が分解して水素と酸素になる為には3500℃以上が必要だから、燃料棒は解けて炉の下部は解けていると思った。その後ジルコニウムの水発生による水素発生、水の放射分解による水素発生、金属腐食等による水素発生を知ったが結果は同じである。

 長崎、広島に落とされた原爆及び1954年のビキニ環礁の水爆実験に対するアレルギーを払拭する為に、エネルギーを殆ど持たない日本にとって原子力発電は必要であるという前提の基にプロパガンダが強烈に行われた。

 かくして、原子力発電は初めに安全ありきで、そして発電原価は他の発電に比べて最も安いという前提の基に始まった。

 日本で最初の原子力発電が行われたのは1963年(昭和38年)1026日で、東海村に建設された動力試験炉であるJPDRが初発電を行った。

 原子力発電の原価をさげるために1974には電源三法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)が成立し、原発をつくるごとに交付金が出てくる仕組みができ、さらに電力会社の総括原価方式により原子力発電所を作れば作るほどもうかる仕組みが出来上がった。

 

2. 原子力発電の矛盾

 ウラン鉱石が化学処理過程を得て純粋なウランになった時、99.3%がウラン238で、ウラン235はわずか0.7%としかなく、これでは臨界核分裂を起こさない。従ってウラン235の濃度を高める為、遠心分離機でウラン235の濃度を3%以上まで高める。ウランの濃度を高めた残りを劣化ウラン(ウラン2350.25%)という。

 核燃料ウラン23997%、ウラン2383%を原子力発電で核分裂させるとウラン23895%、ウラン2351%、プルトニウム2391%高濃度核破棄物3%となる。ここまでがウラン原子力発電の範囲である。

 さてウラン23895%、ウラン2351%、プルトニウム2391%高濃度核破棄物3%はとよく見るとウラン235がまだ1%含まれている、どうして0%になるまで消費しないかは、原子力発電に於いて核分裂はウラン235だけではなくウラン238が、ウラン235の核分裂により、発生した低速中性子を吸収してプルトニウム239及び240に変換される。そしてプルトニウム239及び240もまた中性子を吸収して核分裂を起こす。そしてそのエネルギー発生率はプルトニウム239及び240の方が遥かに大きいから、プルトニウムが1%を超えると核反応の増大によって原子炉が熱的に持たなくなる。従ってこの時点で核燃料棒を引き上げ発電を停止する。

 増殖を実現するには、核分裂で放出される中性子の数ηが2個以上でなければならぬ。実際の原子炉では炉心から漏れて外へ出る中性子や燃料以外の構成物で吸収される中性子があるから、ηの値からこのようなロスを差引いても、2個以上の中性子が残っていること、すなわちηの値が2よりできるだけ大きいほど増殖の可能性が高い。
 ウラン235は平均2.44個であるが、プルトニウム239の場合は平均2.88個で0.46個大きい。この事はプルトニウム239は幾何級数的に反応を加速させることが出来るのだ、そして中性子のエネルギーが高くなるほどηも大きくなるが、ウラン235に比べてプルトニウム239はより大きな余裕をもっていて、増殖するのに有利である。したがって、プルトニウム239を高速中性子で核分裂反応をおこさせるとウラン238からどんどんプルトニウムが出来る。即ち燃料がどんどん増える原子炉が増殖に最も適しているから高速増殖炉と呼ばれている。

 100万kWからの原発からは毎年20(t)の使用済み核燃料が発生し、その結果日本は現在17,000(t)の使用済み核破棄物を保有している。

 プルトニウムもまた不必要な生成物であるが、使用済み核破棄燃料(3%)は使用できないから、放射能が少なるまで10万年以上に渡って保存しなければならない。しかしプルトニウムは原子爆弾の原料となる。プルトニウムは自然界にはないとされていたがウラン鉱石の中に存在することが解った(よく考えると当たり前の話である。)軽水炉発電によって生じたプルトニウムの同位体は5つあり、プルトニウム23980%、プルトニウム24020%であるが、その他の同位体は微量である。プルトニウム240は自発核分裂を起こしランダムに中性子を放出するから、計画した時間に正確に連鎖反応を開始させることが出来ない。それ故原子爆弾に使用するにはプルトニウム24010%以下にしなければ核爆発時間を制御できない。プルトニウム239とプルトニウム240は原子量に差はたった1しかないからプルトニウム239とプルトニウム240の分離は非常に難しい。しかし、プルトニウム(プルトニウム23980%、プルトニウム24020%)を高速増殖炉で反応させればプルトニウム23999%以上の原子爆弾用プルトニウムとしてブランケットという部分に生成できる。かくして、常陽のブランケットにはプルトニウム23922 kg、もんじゅのブランケットにはプルトニウム23962 kg生成されている。これを再処理工場で取り出すだけで原子爆弾30発以上を製造できると言われている。

 使用済み核燃料はウラン23895%、ウラン2351%プルトニウム2391%が含まれているから、分離すれば有効利用できる。現在はこの分離をイギリス、フランスに委託処理しているが日本単独でもできるように六ケ所村再処理工場が計画された。

 六ケ所村再処理工場は使用済み核燃料をウラン235、ウラン238、プルトニウム239と高濃度放射性物質に分離する工場だが。予定は2009年だったがトラブル続きで2018年までに変更され予算は7600億円から3.8倍の29,000億円に膨れ上がった。この手の予算は通常3倍以上になるのが通常の経験上の法則である。最近は4倍が常識になったのだろう?

 

3. プルトニウムの処理

 原子力発電の結果燃料棒の灰と考えられるものには、23895%、ウラン2351%、プルトニウム2391%高濃度核破棄物3%が含まれている、高濃度核破棄物3%は投棄するしかない、プルトニウム239はウラン235よりもエネルギー効率が良く核分裂してくれる。という事でプルトニウム239で原子力発電というのが各国で考えたが、技術的にあまりにも難しくて日本以外の国は研究開発を断念したが、日本だけが高速増殖炉「もんじゆ」として運転されたが現在中止中であるが、完全中止されたわけではない。

 プルトニウムの使用できる原子炉が無いのに核燃料核破棄物からウラン235とプルトニウムを取り出して、いたずらにプルトニウムの保有量を増やすのはおかしいと各国から非難を受け、六ケ所村再処理工場は閉鎖するべきだと言われている。使用済み核燃料は3%だから、ウラン2351%とプルトニウム2391%を、これらの全てを核破棄物の5%にすればよいだけである。

 

4. プルトニウムの現状

 もともと高速増殖炉はウランの枯渇に備えて燃やせば燃やすほど増える燃料として将来を見据えて考え出されたが、その後ウランは採掘可能年数が増し、海水にも無尽蔵にあることがわかってきたにもかかわらず、いったん決めたことは初志貫徹を貫く日本の役人の習性の賜物である。

 日本はプルトニウムが使用できる体制がないにもかかわらず、プルトニウムを生産を増やしており、さらに六ケ所村再処理工場で増やそうとしている。

 現在平成29年度で48(t)(国内に10.8tある、その他はフランスとイギリスにある。)のプルトニウムも保有しているのだ。このような施策に対して各国は疑いの目で日本を見ている。何故プルトニウムの保存量を増やすのだと!

 

5. 原子爆弾

 ウラン原爆に用いるためにはウラン235の濃度を通常90%以上に高めなければならず、辛うじて核爆発を引き起こす程度でも最低70%以上の濃縮ウランが必要となる。放射能が少ないために取り扱いは容易であるが、原爆1個あたりの製造コストはプルトニウム原爆より高価になる。一方で、ウラン濃縮施設は地下に設置しやすく大量の赤外線を放射しないので偵察衛星に位置を察知されにくい。

 プルトニウムをウランのように臨界質量以下の小片を2つ合体させ臨界質量以上にしたところで原子爆弾にはならない。何故ならプルトニウムの核分裂によって発生する中性子はウランよりも多く、幾何級数的に連鎖反応が起き、その結果次の連鎖反応が起きる前にプルトニウムの爆発エネルギーにより飛び散ってしまうからだ。故に火薬で爆縮を行われなければならなかったから最初のプルトニウム原子爆弾は2.5(t)にもなった。

 

 プルトニウム239の半減期は約24000年であり、金属プルトニウムは、特に粉末状態において自然発火する事がある。塊の状態でも、湿気を含む大気中では自然発火する事があり、過去のプルトニウム事故の多くが、この自然発火の結果とされている。プルトニウムとその化合物は人体にとって非常に有害とされたが、化学的な毒性は他の一般的な重金属と同程度である。プルトニウム原子爆弾は生成球状プルトニウムの臨界量16 kgだが、中性子反射体で製作したタンパーを用いて中心方向に中性子を反射させることで10 kg(直径10 cmの球に相当)まで減らすことができる。

 

 日本国内でのプルトニウム保管は4.8tは81カ所で。殆どの施設でプルトニウムの必要は無く無用のものである。本当は処分してしまいたいがプルトニウムであるが故に捨てる訳にもいかない。その結果倉庫の奥深く保管され、中身の情報がない。ずさんな管理、プルトニウムの管理の先送り等が行われ、その内行方不明になるであろう。

6. 高速増殖炉

 高速増殖炉(FBRFast Breeder Reactor)は、前項で述べた劣化ウランは殆どがウラン238でウラン原子力用燃料としては価値がない。プルトニウムを劣化ウランで囲みプルトニウムを核反応させればウラン238がプルトニウム239に変わり、プルトニウムを燃やせばプルトニウムが増えるという夢の燃料サイクルが出来上がる。高速増殖炉は、ウラン238の臨界に必要な低速中性子ではなく高速中性子をそのまま利用するもので減速材の水は使用できないから、ナトリウムを使用する。このナトリウムは曲者で水と接触すると爆発的な反応を引き起こす。

 MOX燃料(モックス)とは混合酸化物燃料の略称であり、原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を49%に高めた核燃料である。主として高速増殖炉の燃料に用いられるが、既存の軽水炉用燃料ペレットと同一の形状に加工し、適切な核設計を行ったうえで適切な位置に配置することにより、軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ。MOXとは(Mixed OXide 「混合された酸化物」の意)の頭文字を採ったものである。.

 

7. プルサーマル

 プルサーマルとは、プルトニウムで燃料を作り、従来の熱中性子炉で燃料の一部として使うことを言う。プルサーマルで使われるMOX燃料はプルトニウムの含有量が4 9%であり、MOX燃料を1/3程度使用する場合、発電量全体に占めるプルトニウムによる発電量は平均50%強となる。

8. 原子力発電のコスト

 

 

9. 原子力発電単価に含まれない費用

2.1 原子力発電単価の中には電源3法交付金、送電費用、バックエンド費用(但し廃炉費用は積立ているが明らかに不足、放射性破棄物の費用、核燃料サイクルの事業は含まれていない。)

 

10. 放射性破棄物の処理

 原子力発電所の廃炉には前例がある。英のとロースフィニッド発電所が停止して、1993年廃炉開始作業を開始した。2013年放射能物質を99%除去したと言っているが、炉周辺、建屋等の低レベルの放射線量は依然高く、2026年作業を一端中止して、2073年に作業を開始して2083年完了という事らしい。つまり完全廃炉には2082-199390年掛かるという事である。

 2013年までの費用は900億円掛かった、しかし今後70年間にいくらの費用が掛かるかは誰にもわからないのだ。ロースフィニッド発電所(23.5万kW)は何の事故もなく、小規模であり、それでも廃炉に90年掛かるといっている。

 翻って日本の場合、日本原子力発電東海原発(16.6kW)の廃炉費用を850億円と見込み、2020年度までに終了させる予定。(現在は2030年になっており、建屋撤去まで含む)中部電力は浜岡12号機(54万kW、84万Kw)の2基で841億円かかると想定し、2036年度までに終えると計画されている。これは英のトロースフィニッド発電所の実例と比べると明らかに間違っている。

 東京電力は、福島の廃炉処理がまだめどが立っていないのに、柏崎刈羽原発の再稼働を最優先の経営課題としている。そして2019年柏崎刈羽原発の再稼働対策費を11690億円(もとは6800億円)とした。さらに福島原発の廃炉には幾らかかるか誰もわからないのだ。少なくとも数兆円で収まることは絶対にありえない。原子力建屋の解体等廃炉には40年に及ぶとしているが、解体するだけで、その後の計画は全くない。もはや東京電力「売上高6699億円(20163月)単独で処理できる問題ではないのだ。

 すでに経済産業省が福島原発だけで215000億円(3年前は11兆円)かかるといっているが、公益社団法人日本経済研究センターは81兆円と言っている。この中には数十万年に及び(プルトニウム239の半減期は24000年)高濃度放射性破棄物の保管、管理費用は含まれていないのだ。

 注:廃炉費用という時、原子炉を解体する費用は含まれるが、それ以降高濃度核破棄物の保管、管理は含まれていない。又中間貯蔵地という言葉があるが、あくまで中間であって核破棄物を分離した後の物をどこに安全保管するかという事は何の計画もない。中間貯蔵地は最終処理地が無いから誤魔化しの言葉として作成された。我が国の計画はあまりにもずさんで期間が現実離れしている。

 トロースフィニッド発電所の結果があるのに、予算がデタラメだ。経済産業省が福島原発の処理に関して、予算の上塗りが今後何回も何回もなされていくであろう。もはや東京電力が単独で処理できる問題ではない、国家が介入しない限り、この問題は解決しない。

 これらの放射性破棄物の問題を解決する、現実的な方法は今の所ない、最も有力なのは地層分離方式で核廃棄物を再処理せず、そのまま数十万年に渡って保管する方法で、世界で唯一のフィンランドのオンロカ地方の最終処理所の地下600mに、原発6基分の9,000(t)の高濃度核廃棄物を保管する計画であるが、他の国では住民の反対に会い進んでいない。

 数十万年に渡って記録が正確に伝わるとはとても考えることは出来ないし、又保存している地殻が数万年後同じ位置に存在しているという保証はない。故に地層分離方式は絶対安全とは言えない。分離核変換方法は使用済みに含まれる放射性物質を分離して、半減期が長い放射性物質は核変換して半減期が短い物質にする方法であるが、研究段階である。

 最後に六ケ所村の住民の平均年収は1300万円である。生活が困っている人は六ケ所村に住民票を移したらよい、日本の原子力行政の縮図を甘受できるに違いない。

 電気事業連合会の1基当たりの原発廃炉費用試算は5320億円(2002年試算)この手の予想予算は経験則からして4倍以上となるのは確実。電気事業連合会の試算を信じれば、0.5320×4×54基=114.912兆円という廃炉費用に福島間の特別費用は加算されていないから、21.5×486兆円。合計200.912兆円。廃炉だけで200兆円を超えるのは明らかである。優に国家税収入の約5倍に等しいのだ。この中には高濃度核破棄物の保管費用は入っていないのだ。

 原発廃炉費用には高濃度放射性破棄物の数十万年に渡る保管、管理費用は含まれていないのだ。“エィヤ”とN2ロケットで太陽に打ち込むしか無くなる。

 東京電力は原子力で躓いた失策を、原子力で取り戻そうそうとすることは、より深みにハマルことを意味する。原発再稼働を主張する人は現在の事しか考えていない、すでに原子力発電所があるのだから、いま可動した方がエネルギー単価が安くなるという。しかし現実には巨大な負の遺産を未来に押し付けることになっている。

 だから東京電力は高らかに原子力発電から撤退することを、宣言することが生き残る唯一の道であると考える。何故なら東京電力が単独で原子力の諸問題に対応していくことなど絶対的に不可能なのだ。

  現在世界で434基の原子力が稼働しており、スリーマイル、チェルノブイリ、福島と続いた。原発の技術が進んでいる5カ国のうち3カ国で事故を起こした。今後50年以内に数回の原発事故を起こす事とは必然的である。

 原子力発電の負の遺産は人類にとっても、人類の種の存続にとっても巨大な足かせになるのは間違いない。世界人類は現在人類の絶滅に必要なウランとプルトニウムを一生懸命生産して、核ジャックがよりし易い方向に進んでいるのだ。

 

9. 再生可能エネルギー

 1990年代日本の再生可能エネルギーは、あらゆる分野で世界のトップクラスであったが、予想される再生可能エネルギーの電力原価が145/kWhと原子力発電の6/kWhとあまりにも高い為に、次々と中止にされたが、諸外国は中止にしなかった。その結果再生可能エネルギー量の%は世界47位、電力量で言うと世界4位になる。エネルギーの種別では、太陽光3位、地熱10位、風力21位、バイオマス廃棄物6位。発電量では世界3位???

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